西武台の人間教育

いままで通り教師が教える部分が「不易」なら、子どもたちが主体的に学ぶ部分が「流行」。子どもに疑問を持たせ、好奇心を抱かせ、モチベーションを上げることが教師の役割です。

副校長 小林 正高 河野 芳人

小林「小学校に入学した子どもが大学を卒業するころ、65%の人がいまは存在しない職業に就くだろう」。
アメリカの大学教授がこんな予測をして話題になったことがあります。変化が激しく、未来の予測が困難な時代がやってきているのですね。どんな教育をすれば、子どもたちは迷わずに生きていけるのか。新しい学習指導要領には「主体性」という言葉が色濃く出ています。子供たちに自立し、自分で人生を切り拓く力を養ってほしいという願いが込められているのでしょう。新しい学び方が重要視されているのは、このような背景があります。
知識の教え込みから生徒に考えてもらう授業へ変化していくとともに、量から質の学びへのシフトを考える必要が出てきているのです。開校当初から北海道大学の重田先生や東京大学の中澤先生の協力を得て、アクティブラーニング型の授業を積極的に取り入れているのは、このような課題を先取りしてのことです。

河野私がアクティブラーニングを担当して10年目となります。試行錯誤を繰り返す中で、最近感じているのが、生徒に疑問を持たせることの大切さです。「これなんだろう」「これどういうことなの」。疑問は、好奇心となり、モチベーションにつながります。
これを踏まえて授業法を考えることが、教師の重要な役割です。以前、授業で「イギリスはEU脱退をするべきか否か」を考えたことがあります。
①賛成・反対の立場を自分で決める。
②仲間と意見交換を行いグループみんなの意見を作り上げる。
③グループの意見をプレゼンテーションする。
この3段階で進めるのが西武台のアクティブラーニングです。このときのアウトプットにディベート形式を採用しました。賛成派・反対派のどちらに入るかを決めるためには、両方の立場について調べなければなりません。教科書に書いてあるのはほんの少しだけ。子どもたちはいろいろな文献を探したり、iPadを使って英国で放送されている動画にアクセスするなど、熱心に調べてくれました。このとき、興味を持つことができると、学習に対する意欲が向上するものだと実感しました。

小林グループワークやディベート形式を取り入れたのはとてもいいことだと思います。自分の中だけで考えるには、視点や範囲にも限界があり、見える世界が狭くなってしまいます。しかし、他者を通すことで「そういう視点もあったのか」という、気づきが生まれます。
自己理解を深めるのに、他者を理解することが大切なのはこの点です。そして、1対1の関係は1対多数に広がり、社会の中で生きていることを意識できるようになるのです。こうして、子どもたちの世界観は広がり、個性豊かな考えを持てるようになります。
学びへの興味を沸かせ、自主性を持たせるためのアクティブラーニング型授業やICT機器を活用した新しい手法は、これからの時代に必要不可欠になってきているのでしょうね。

河野しかし、本格的にアクティブラーニングを取り入れていくには授業時間が足りないことが課題です。授業で教科書をすべて教えようとすると、それだけで時間がいっぱいになってしまうからです。
「教科書を教える」から「教科書で教える」ことを目指す授業が大切になっていると思います。これらを解決するためにICT機器を活用して知識習得の部分を効率化していけばよいと思います。本校ではフラッシュ学習を取り入れている先生がたくさんいます。
紙で小テストを行う代わりに画面にパッと問題を映して生徒に声を出して答えてもらう学習です。いままで10問で5分ほどかけたとすると、何十問も解くことができます。その他にも、毎日の授業内容をウェブテストにして配信して復習したり、生徒の質問をウェブで受け付けるなど、その場に先生がいなくてもできることはICTに任せてもよいのでないでしょうか。

小林人間教育の概念は、ほんとうに難しい。私は生涯学び続けることが求められる時代だからこそ、その礎として、生徒が持つ力や可能性を引き出し、伸ばしていくための教えが本校の人間教育ではないかと思っています。
芭蕉の「不易流行」という言葉がありますが、「不易」の部分が「読み書き計算」や「時を守り、場を清め、礼を正す」であるとすれば、「流行」の部分はアクティブラーニングなど、生徒の主体性を生み出す部分といえます。言い替えれば、教師が教えるものが「不易」であれば、生徒に自主的に学ぼうという気持ちを出せるものが「流行」だと考えています。

河野なるほど「不易流行」ですか。当校では「コツコツ日誌」を開校当初から導入しています。これは毎日、担任と生徒間でやり取りする日誌で、学習習慣や学習時間を自分で管理するためにつけます。8期生から、この「コツコツ日誌」はClassiを活用してウェブ上でやり取りするようになりました。生徒はこまめに書き込むことができ、教員は空いた時間を使ってスピーディに返信できます。
「不易(コツコツ日誌)」と「流行(ICT機器やClassi)」の合体で、時間の有効活用ができるようになったと言えるのではないでしょうか。

小林たくましい人間力を養うための視点として、異年齢や異文化間の交流を検討するのも大切なポイントです。中学生が高校生・大学生や社会人と交流する機会を増やしたり、海外の学校との連携をさらに深化させていこうというものです。
学びは教室という箱の中で行うことにこだわる必要ないと思うのです。箱を飛び出して発想してみたほうが面白いじゃないですか。十文字学園女子大学とのコラボレーションについては大学側との議論が始まっています。また、これだけインターネットが普及してるのですから、海外相互交流に関しても、いろいろと考えていけるでしょう。ティンデール校をはじめとした海外の学校との連携も発展させていきたいですね。

河野そうですね。大学のゼミに参加するのは無理があるにしても何らかの形でコラボしていきたいと考えています。ゼミと同テーマの問題を当校の生徒が考えて、発表の場を大学にするとか、当校の文化祭などで大学生に発表してもらうとかです。中学高校の先の世界を生徒が見ることができる部分が大きいのです。こういう人たちが大学生なのかということを知れば、自分の将来を想像しやすくなると思います。
また、海外交流については、ネットライブで海外の子どもたちとディスカッションできるようになったらいいと考えています。

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