今の小学生が社会に出て活躍する10〜20年後。そこには、どんな社会が待っているだろうか。子どもたちが未来の社会でたくましく生きていくために、いま教育はICTや多様な学習スタイルを取り入れ、新しい扉を開こうとしている。
社会の進展に対応した新しい教育を。
〜SACLA(西武台アクティブラーニングラボ)が創る学び〜
西武台高等学校校長中学校設置準備委員長
深澤一博
東京大学大学総合教育研究センター 助教
重田勝介
深澤 私ども西武台高等学校では、来年4月に中高一貫校を新設開校いたします。その一番大きな理由は、社会の劇的な変化です。特に、グローバル化の進展には目覚ましいものがあり、例えば社内公用語を英語にする日本企業も増えつつあります。子どもたちが社会に出て活躍する10年後、20年後に求められるチカラとは何なのか。それを考えると、中・高等教育もまた、社会の変化に対応して変革していかなければなりません。大学の高度な専門学問につながる学力の育成はもちろんのこと、それ以外にもさまざまなチカラを身につけさせる必要があります。
しかしながら、このまま従来の教育スキームで学習量ばかり増やしていっても期待通りの成果が得られるかどうか疑問があります。学びの質の向上や効率化を同時に図っていかなければなりません。こうした動きの中で、私どももICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)の活用が、今後の新しい教育の中で、極めて重要な役割を果たすものと考えています。
重田 そうですね。社会からの要請ということでいえば、大学もまったく同じ課題に直面しています。これは日本だけでなく、世界中同じ状況です。その背景のひとつには、先日の原発事故を受けたエネルギー政策のように、答えがひとつとは限らない複雑な問題が非常に増えてきていて、それをどう打開していくか、ということがあります。それには、まったく新しい発想で価値を創造していくチカラや、他者との協同の中で答えを見つけ出していくチカラが必要になります。しかも、こうした問題はいまや地球規模に及んでいて、グローバルな協同が非常に重要になっており、それに対応したコミュニケーション能力も不可欠になっています。
深澤 そういう多様なチカラを学生に身につけさせるプロジェクトのひとつとして、東京大学ではKALS(駒場アクティブラーニングスタジオ)など、最新のICT環境を備えたスタジオ型教室を設置して、先進的な教育を実践しておられるわけですね。
重田 その通りです。 KALSは、アクティブラーニングを標榜している通り、学生自らが、複雑な情報を整理して本質的な課題を見つけ出し、その解決を目指して、さまざまな視点から能動的に課題に取り組む学びを支援する教室です。タブレットPCやインタラクティブガラスボード、パーソナルレスポンスシステムなどを使い、ディスカッションやグループワーク、デスクトップ実験、メディア制作活動などの能動型学習を、授業によって自由に教室の構成を変えながら進めています。
深澤 ICT環境もさることながら、教室自体が非常にフレキシブルですね。
重田 教室空間は非常に大切だと考えています。大学においては、前に教壇があり固定式の机が並ぶといった講義型の教室もまだ多いのが現状です。他者と協同しながら自立的に学ぶチカラを身につけるということを考えた場合、多様な授業スタイルが求められますが、講義型の教室では制約があり、そうした授業に対応できない。そういうことから、柔軟性をもった教室を模索してきました。学習者が心地よく学べるよう、テーブルのフォルムやカラーなどにも配慮しています。